カッコいい父親として咲く

リハビリを
もっと自由に考える。

作業療法士になろうと思ったのは、兄の影響から。兄がそういう方面の職に就いていて、働いている兄がカッコよく見えたんです。自分もあんな風になれたらと思い、専門学校で作業療法について学び、その後は10年間、介護老人保健施設に勤務。病院から来られた利用者に対し、自宅への復帰を目標にしたリハビリを提供していました。ただ、施設の中で最期を迎えられる方もいらっしゃり、その度に「自分には何ができたのだろう。ご本人、ご家族にとって幸せと思える最期だったのだろうか」と悩むことが多くなっていった…。もっと人の尊厳や最期への向き合い方を学びたい。そう考えて、終末期に関わることが多いであろう、特養・あゆみえんに転職しました。また、現在、小学生になる娘と息子がいて、子どもたちとなるべく多くの時間を過ごせたらと考えたこともあります。徳心会は、公休数が120日と多く、その他の休みもしっかり取れますからね。

あゆみえんでの毎日は、学びの連続です。入職以来、数日から数週間のショートステイを利用されている方々を担当しているのですが、特に印象深いのはご自宅での利用者の生活スタイルに悩まれていた、あるご家族。ご家族は、利用者が自宅で過ごす際は、歩いて移動してほしいと思われていました。歩かないとどんどん筋力が落ちていくので、当然といえば当然の願いです。そんなご家族の意向にそって、私も最初は歩行訓練をサポートしようとしていたのですが、本人のご意向は違うもので。「自分はもう高齢だから歩きたいとは思わない。車椅子でいい。自宅でゆっくり過ごしたい。」と仰られた。それを伺って、私も悩みました。まだある程度の歩く力も残っているし、維持したい。機能訓練指導員という立場ですしね。自分の使命は、利用者の機能向上や維持にありますから。そんな私に、ご家族が掛けてくださった言葉は「自分の親だったらどうしますか?」というものでした。ハッとしましたね。自分はご家族や本人に寄り添いたいと思っていたけれど、指導員としての意見に凝り固まっていたかもしれない、と。その後、ご家族とも相談し、歩行訓練に注力するのではなく、車椅子を使いながら日常生活を送るリハビリの方針を切り替え、おだやかでゆったりとした時間を過ごしていただくように努めました。本人の想いを大切にし、最期の時を過ごしていただく。それを考えた時、リハビリの在り方、考え方も、もっと自由でいいと思えました。

最近は、介護職員に対しての勉強会を起案。寝返り、起き上がり、立ち上がりといった基本動作に対するサポートやリハビリの知識を共有し、より良質なケアができるように施設全体のレベルアップを図っています。基本動作の介助は皆、研修で一通り学んではいますが、毎日、何度もやる動作ですからね。そのサポート技術が向上すれば、利用者のQOL向上に直結します。勉強会の内容は介護職員の反応をフィードバックしてもらって、ブラッシュアップを続けています。皆、熱心に聞いてくれて嬉しいですね。徳心会は一人じゃない。機能訓練指導員、介護職員、看護師、その他にも様々なプロが、皆、利用者を想って働いている。同じ気持ちで働くことができる。自分には特別なことはできないから、学んだことを少しでも共有できたらと思います。そうそう、もう一つの転職理由。子どもたちと過ごせる時間もおかげさまで増えました。まあ、彼らからはぐうたらしてる父親に見えてるかもしれませんが(笑)。でも、いつか大きくなって自分が働く姿を見る機会があったら、「お父さんがやっている仕事、カッコいいよね!」と思ってほしいですね。そのためにも、がんばらないと。利用者やご家族のために、これからも学び続けたいと思います。